■造血幹細胞移植(移植当日)

多量抗がん剤投与が終わって、ついに移植当日を迎えた。ドナーさんはここの病院から離れており、輸送に時間がかかるとのことで夕方以降になるとのことだった。

この日は、まだ抗がん剤の副作用もなく比較的体調は良かった。

夕方になり慌ただしく医師がクリーンルームに現れた。ドナーさんの造血間細胞が届いたのだ。担当医と看護師が心電図の準備を始める。私の体に心電図が取り付けられたころ、ついに銀色のトレイに真っ赤な液の入った輸血パックが運ばれてきた。これが、私の体に移植する造血間細胞になる。輸血パックを見て思わず手を合わせてしまう。「ドナーさん本当にありがとうございます。ありがたくいただきます。」なお磯の香はしなかった。主治医曰く、今回採取したてのまま移植に使用するため磯の香はしないのだそうだ、何かしら処理をすると磯の香がするのだそうだ。

移植がはじまる。移植といってもこの赤い献血パックを点滴チューブに取り付け体に流し込むだけである。なんら輸血とかわらない。ただ、やっぱりこの造血間細胞を体に入れることで、私の体の血液は新しく生まれ変わるのである。感慨深いというか不思議な感覚である。移植による点滴は約1時間程度で終わった。点滴中はベッドで横になりじーっとしていた。その間は特に体調の変化はなかった。

病名が判明して約5カ月やっと移植まで来ることができた。今まで辛い治療ばかりだったけど、これからは新しい血がつくられて体は回復していくのみだ。あと少し。がんばれ。このときは、移植がゴールのように思っていたが、移植後も長い長い道のりがあることを知る由もなく。