■外来受診(Quality of life)

QOL(Quality of life)とは、一般には、ひとりひとりの生活の内容や質のことを指し、どれだけ人間らしい生活や自分らしい生活を送れているか、人生に幸福を見いだせているか、ということを精神面や社会活動を含めた総合的な活力、生きがいなどを尺度としてとらえる概念です。要はその人の生活の満足度を指します。
病気になるまではこのような言葉は意識もしていませんでした。ただがん患者にとっては重要な指標になります。がん治療をする前後で生活の満足度が落ちてしまう可能性があるからです。白血病治療においては、抗がん剤・放射線治療による副作用、移植に伴うGVHD、治療による後遺症が残る可能性があります。私もまだ体力の衰え、味覚障害、足先しびれがあり、また今は仕事もできなく収入もない状態になってしまっています。確実にQOLが落ちてます。

5月の上旬、(公財)日本骨髄バング/NPO法人血液情報広場・つばさ/国立がん研究センター中央病院 共催の市民公開講座に参加してきました。題目は『造血幹細胞移植の成果と課題を共有しよう』です。今の私にはとても興味がある内容になっており、しかも参加費が無料。これは行くしかありません。体調も良かったので一人で電車に乗って参加してきました。大きな会場で、100人以上の出席者がいて驚きました。
講演の内容は、まず造血細胞移植についての今を医師がわかりやすく説明してくれました、そして移植患者やドナー経験者の体験談をリアルに説明してくれました。どの講演も私にとっては新鮮で、今後社会復帰をどうしようか不安になっている私にとっては、とても為になり有意義な時間を過ごすことができました。

その中で私が興味をひいたのは医師が説明してくれたQOLについてです。内容は「造血幹細胞移植の治療成績は年々向上しています。」「それに伴い長期生存率も上昇しています。」「医療としては治療を終了した長期生存時のQOLを上げるとこが大事であると考えています。」とのことでした。治療だけでなくその後の患者の生活の質(QOL)まで見据えた考え方に医療の進歩とすばらしさを感じました。

その講演で移植患者を対象に調査した、精神面身体面社会面全般面QOL調査の結果を公表してくれました。内容ですが、

移植患者の精神面のQOLは国民標準値よりも高く icon-level-up なっていました。とてもびっくりさせられました。抗がん剤治療+移植という長期間に及ぶ大変な治療を乗り越えることで精神的に強くなる傾向があるのでしょうか。より精神的に強くポジティブになった人が多いという結果でした。たしかに私も今は病気前に比べて精神的に充実しているように思います。今はありがたく生かされている身。小さなことにも感謝して、些細なことにも感動を覚え、日々を大切に過ごしています。

移植患者の身体面のQOLは国民標準より低く icon-level-down なっていました。私も体力が衰えすぐに立ち眩みなどが起こります。ただ、移植者の体験談の中で骨髄バンクランナーの活動を聞くことができました。マラソン時に骨髄バンクのたすきをかけて走ることで、骨髄バンクドナー活動を推進するという崇高な活動です。そのなかで「移植患者でも10キロマラソンを完走されている」という事が聞けてとても勇気をもらえました。皆さん本当に病気だったのか?というぐらい元気な感じの方ばかりでした。私もいつかは10キロ走れるような体を取り戻したいと思います。(病気前でも10キロ走れたかどうかわかりませんが・・)

移植患者の社会面のQOLも国民標準より低く icon-level-down なっていました。私も社会復帰ができておらず今は不安な状態です。なお、がん患者の社会復帰に向けては近年国も動き出しており『がん対策推進基本計画(厚労省)』などの枠組みも明示され、がん治療後の就労支援ガイドラインも整備されてきているとのことでした。一般企業へもがん患者の就労についての理解が浸透していってほしいと思います。また私の会社もがん患者の就労に理解があればと望んでいます。また講演の中に、「社会復帰への一つの区切りとして、免疫抑制剤が無くなったとき。」というのもありましたが、うーん。ここは自分の体と家族と会社と相談して決めていきたいと思っています。

なお全般的にQOLは、慢性のGVHDが無いほうが高くなる傾向があるようです。如何に慢性GVHDを失くす治療をするかがQOL向上につながるようです。私は幸いにも慢性GVHDが無いため恵まれているのだと思いました。

QOLはがんサバイバーにとって非常に重要です。この先どこまでQOLを取り戻せるだろうか。。