■一時退院(ウィッグ)

髪は女の命。抗がん剤治療を行うと脱毛という副作用で、髪の毛が抜け落ちてしまう。女性にとってはとても辛い治療だ。

私も髪の毛が抜け落ちてしまった。まばらに短い髪が点々と残っているハゲ散らかした状態だ。かといって全て剃ってしまう勇気もない。男の私もさすがにこの頭の状態で外にでるには抵抗がある。外に出かける場合は、ニット帽+マスクを必ず装着している。ただ春過ぎのこの時期なのでこの恰好に違和感が少ないのだが、夏でこの恰好は少し怪しい人になってしまう。

ウィッグという選択肢もあるが、医療用ウィッグを確認すると20万円~40万円と非常に高額である。うーん「患者の足元見てんなー」って思う。

妻がインターネットで安いウィッグを探し出してきた。メンズ用・ショート・医療用・人毛100%・フリーサイズで。お値段!なんと。たったの1万円!!安い。早速購入。購入したウィッグを装着してみる。毛は少しカーブが入ったくせっ毛。全体的に毛が長く違和感がある。妻が「美容院でウィッグの毛を切って整えてもらおう。」と、美容院に電話をかける。

妻  「もしもし、そちらでウィッグの毛のカットってできますか?」
美容院『ウチはちょっと、ウィッグは対応してません。すみません。』
っていうやり取りが、19件ぐらいあって。断られ、20件目ぐらいで、やっと『みてみましょうか。』とカットが出来そうな美容院をみつけた。場所は電車で4駅離れた美容院だ。場所が近い美容院だと今後気まずくなりそうなので、これぐらい離れたところが良い。

後日、妻と二人で電車で向かう。私はばっちりニット帽を装着。平日お昼ってことで店は空いている。カットしているお客様が1名だけだった。美容院のお兄さんに、『どうぞー』と一番奥の席に案内してもらい。トイレを案内されウィッグ着けるようにうながされる。ウィッグを付けて椅子に座る。
美容院のお兄さんに、ウィッグを全体的にすいてもらい、毛先の長い場所をカットしてもらう。さすが美容師、見栄えは良くなった。
妻が「ウィッグのままでいいんじゃない。」というので、ウィッグをつけたまま店を後にする。
ウィッグをつけた感覚は、ニット帽をかぶっているのとほぼ変わらない。ただズレが気になる。ニット帽であればズレれば普通になおせるが、ウィッグがズレテしまうとなおすときに見られないようにと気を使う。はじめは少し「大丈夫かなー。」と戸惑いがあったが、慣れてしまえば、人の目を気にすることなく街を歩けた。

その日は家に帰った後も、ウィッグをつけたまま過ごした。

まず、小学校から上の子(姉)が帰ってくる。
姉 「ただいまー。」
私 ソファーで座っている。

姉 手洗い・うがいの後ソファーに来てくれる。
私 『おかえりー。』ウィッグ姿でドキドキしながら言う。
姉 「パパかつらつけたの?似合ってるよ。」とニコニコして言ってくれる。そのまま自分の机に。

次に、幼稚園から下の子(弟)が帰ってくる。
弟 「ただいまー。パパー!」
私 ソファーで座っている。

弟 手洗い・うがいの後ソファーに来てくれる。
私 『おかえりー。』ウィッグ姿でドキドキしながら言う。
弟 「パパ髪の毛あったほうがいい。」とニコニコして私の隣に座ってくる。

子供の反応も上々だ。。

それからは、ちょくちょくウィッグをつけて外にでかけるようにもなった。うん。ウィッグ生活もいいもんだ。